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最高の料理、サービス、空間、そして最高の友

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 東京銀座資生堂。このフレーズを聞いたことのない日本人は少ないはず。銀座は、資生堂創業の地。その銀座並木通りに、リニューアルされた本社ビルの1階に、ドアマンを従えた重厚な扉が。この扉の向こうに、たくさんの人々の想いを紡いだ「ロオジエ物語」があるのです。。
 ロオジエは1973年に創業した高級フレンチレストラン。コスメティック企業の「資生堂」が、日本の人々に、真のフランス文化を啓蒙すべく作ったレストラン。その創業から今年で40周年を迎えます。本社ビルの立て替えに伴い、2年半をかけて、ロオジエもリニューアル。10月25日、華々しく新たな物語が始まったのです。
 私にとってのロオジエ・・・私がまだ、郷里の栃木をベースに活動していたころは、世はまさにグルメブーム。東京の食のジャーナリストに教えてもらい、リニューアルオープンしたばかりの資生堂パーラー10階にあるイタリアンレストラン「ファロ資生堂」に行ったことが始まりかな。田舎からスーツに身を包み、緊張して10階行きのエレベーターを待っていたのを思い出します。お店を訪ねる前に読んだ「レストランマナー読本」。そこに書いてあったことを、頭の中で反復練習。田舎者だと思われないように、田舎者だと思われないように・・・そんなに気を張ってたら、せっかくの食事も楽しめないのに、とにかく、格好ばかり気にしていたの。
 そんな緊張する僕のテーブルを担当してくれたのが、当時のマネージャーの武田さん。緊張をほぐすどころか、料理の説明はもちろん、ユーモアある雑談。何を食べたかは全く思い出せないけど、「本当に楽しかった!」という記憶はしっかり残っている。
 今思えば、あれは一種の麻薬のようなものだったのかも。あの楽しい気分を体験したくて、なけなしのお金を用意して、背伸びしてファロにお世話になったっけ。そんなときだったかな。ロオジエのことを知ったのは。武田さんが「ロオジエへも、ぜひ行ってみたください。」と言うので、ようやく取れた2ヶ月先の予約、ロオジエを訪れた28歳のころのことです。
 その当時は、高級レストランなら、何でも感動したものです。知識も経験も乏しいわけですから。僕は、「おいしい」はもちろん、「楽しい」を求めて高級レストランに行っていたんだと思います。なので、ロオジエの何が素晴らしくてなんてことはまったく言えず、とにかく「楽しい」「美しい」「おいしい」いろんな形容詞があふれる時間に感動してたのでしょうね。ただ、前のブログでも書いたけど、そのとき見かけた天才シェフ「ジャック・ボリー」の強烈な印象。にこやかにダイニングに現れ、挨拶したかと思うと、僕の前を通り過ぎて常連客のテーブルへ。一緒にソファーに座ってワインを飲んでる。「この天才シェフの記憶に残るような人になりたい。あんな風に、大切にしてもらえる客になりたい。」と思ったこともしっかり覚えています。そして、その想いは、今の僕の礎になっている。
 それからしばらくして、武田さんとプライベートでランチをすることになったの。当然、ファロのマネージャーとランチしておしゃべりできるなんて、それだけでもうれしかったし、鼻高々だった。そのときに、武田さんは「今度ロオジエに移動する事になりまして・・」と。「ファロでマネージャなのに、ロオジエに移動したら、マネージャーじゃないんでしょ?」と返す僕。そんな僕に「この仕事をしていてい、ロオジエに声をかけてもらえるということが、どれだけ名誉なことかわかりますか?」と話す武田さん。返す言葉がみあたらなかった。
 こんなことがあって、それから、ロオジエに通うことになる訳ですが(通うと言っても、高価な食事ですので、そんな度々は行けないのだけど)、この体験が、食に関する知識を深め、経験を積むきっかけになり、世界中の食体験を、トラベルプランニングに生かすようになるわけです。
 今日、新しい「ロオジエ」に行ってきました。ロオジエがどんな風だったかは、いろいろな方がレポートしていると思いますので、僕は割愛しますね。僕が思うことは、どうして、多くの人が、レストランを評価するときに、お皿の上の話ばかりに集中するのかということ。この料理は古くさいとか、このシェフがだめだとか・・・。レストランは総合力で評価してもらいたいなと僕は思うのです。僕は、ロオジエの総合力はきわめて高いと思います。高級食材で料理さえうまかったら、立ち食いや、きったない店でもいいのかしら??僕は、どんなにおいしくても立って食べるなんて嫌だし、ブッフェみたいに、食べ物に群がって列つくって待ってるなんてところを見られるのも嫌。街角やローカルないわゆるB級グルメは別として、高価なお金を払って食事をするなら、料理、空間、サービス、そしてそこに集まる客たちが醸し出す雰囲気。この4つのバランスが良いお店がいいなと思うの。これは、僕の勝手な意見だけど、ロオジエは「場」なのだと思っています。人々が集い、楽しい時間を共有。料理人やギャルソンは、人々が楽しい時間を過ごすために、おいしく、綺麗な料理を絶妙なタイミングでテーブルに出し、またまた絶妙なタイミングでワインを注ぎ入れ、客たちの会話が「すいませーん!」なんて言葉で途切れることのないように、四六時中気を配ってくれている。なので、よい出会いが育まれ、様々な知識や経験、思い出を共有でき、新しい文化の種が生まれるんじゃないかな。いわゆる「文化発生装置」。それが、高級レストランという「場」なんだと思うの。ロオジエには関係ないのだけど、皿の上にばかり注目するから、最近テレビをにぎわせている大正エビがどうのこうのという問題が出て来てしまうんでしょうね。腐ったものを出された訳ではないわけですし、そのときあは、おいしいと思って、楽しい食事を経験できたのだから、その思い出をぶちこわすようなことは、あえてしなくてもいいのではないかと僕は思います。そのときは楽しかったでしょう?
 また、高級レストランがオープンすると、必ず、シェフが誰か?こんなことに注目が集中するけど、新しい「ロオジエ」は、ロオジエという場にふさわしい料理を作れる「料理人」を探してたのだと思います。プロデューサーのジャック・ボリーさんは、いつも僕に言ってるんだけど、「レストランはチームだ」。シェフがイライラして、周りのスタッフに気を使わせるなんてのは問題外。周りのスタッフの気持ちさえもうまーく料理できちゃう、そんな人間力も兼ね備えたシェフがキッチンに立たなければ、すべてのスタッフが生き生きと働けるレストランにはならないのだと。シェフの役割は40%、あとの60%はフロアのスタッフの役割とボリーさんはいつも言うの。言い換えれば、40%を担うシェフに注目するのはナンセンス。60%を担うフロアの責任者の内堀さんこそ、ロオジエの総合満足点をたたき出す立役者なのかもしれませんよ。内堀さんにテーブルを担当してもらえるのは、もちろん上顧客だけですけどね。
 食通の皆さん、ロオジエに関して、様々な意見があることでしょう。ただ、ここは一つ、俯瞰してみる目を持っていただけないでしょうか。料理やシェフのことをあれこれと言う前に、あなたは「楽しくなかったのでしょうか?」たとえ、料理が口に合わなかったとしても、楽しいことはひとつもなかったのでしょうか?作家の宇田川悟先生は言います。「人生の中で、最高の料理、最高の空間、最高のサービス、そして最高の友と食事をする経験は、数回しかない。」と。僕は、外国のVIPをアテンドする立場として、世界に誇れる「場」をこの日本に残してくれた「資生堂」という企業に、深く感謝したいと思います。和食を世界遺産にという声が高まっている昨今ですが、インターナショナルスタンダードを満たせるレストランは、このロオジエをおいて、他にはないと僕は思っています。1973年に手探り状態で始まった「ロオジエ」。資生堂福原会長をはじめ、多くの人々が、情熱と真心、最高の技術とセンスを紡いで、世界に認められるレストランになったのです。もし、グローバルに活躍したいと思うのであれば、ロオジエの見えない上顧客リストに名を連ねられるような人になっても、決して損はないと思います。そんな気位の高いレストランが銀座にあること。ロオジエが、銀座が世界から一目おかれるエネルギーになっていることは、言うまでもないのですから。


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